いきなりですが、みなさんはこんな実験をご存知でしょうか?世界でも有数の難関校、アメリカのスタンフォード大学で行われたものです。実験では、大学のバスケット選手達に対して“あること”をした結果、フリースローやスリーポイントシュートの成功率が上がったというのです。具体的な結果は以下の通り。

約10%もシュート率が上がるというのはバスケットをしている人にとって驚異的な結果であることはわかりやすいかと思います。また、実験ではこのほかにも、80メートルの反復走のタイムが改善された・怪我人が大幅に減ったという結果も出ています。
では、いったい何をしてシュート成功率が上がったのでしょうか?
答えは睡眠指導、つまり良い睡眠をとれるアドバイスを選手たちにしたということです。
成長期のみなさんは日々、圧倒的なスピードで成長しています。身長が伸びる、筋肉がつく、骨が伸びる、頭が良くなる……。そのすべての土台となっているのが“睡眠”です。
ですが一方で、習い事や塾などで忙しかったり、スマホで簡単に暇つぶしができる現代は睡眠不足になりやすい環境が整っているともいえます。実際、日本の成長期のみなさんは海外に比べて睡眠が足りていないという研究データもあります。
アメリカのメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手も睡眠を重要視するスポーツ選手の1人。 彼は睡眠をただの回復ではなくトレーニングだと言っているほど。それくらい睡眠はスポーツをする上で無視できない要素なのです。
睡眠はなぜ大切なのでしょうか?そして、良い睡眠をとることは皆さんにとってどんなメリットがあるのでしょうか。睡眠に関しての知識は、きっとみなさんのスポーツライフを助けてくれると思います。一緒に勉強していきましょう!
そもそも、なぜ眠るの?
睡眠は体にとって休息の時間のイメージがありますが、実際に体の中で起こっていることは少しそのイメージとは違います。特に、みなさんの頭の中、つまり「脳」は活発に動いており睡眠中様々な仕事をしています。睡眠中に脳が行っている仕事は以下の通り。
脳の中の不要なものを掃除する

寝ている間は脳にとって絶好の“大掃除タイム”です。起きている間に脳を使うと、細かいゴミ(老廃物)が溜まっていきます。これをそのままにしておくと、脳が上手く働かず集中力が落ちたり疲れが取れなかったりします。
睡眠中は脳の中を流れる水分(脳脊髄液と言いますが覚えなくてOK)がゴミを洗い流してくれることで、リフレッシュしサッパリした頭で朝を迎えることができています。
記憶を整理・定着させる
勉強したこと、部活で覚えた動き、友達との出来事…。こうした記憶はすぐに脳に保存できるわけではありません。睡眠中に脳は「大事な記憶」「いらない記憶」に分けて整理し、必要なものだけ長く保存します。
何度も反復して覚えようとしたこと、強烈なイメージで印象に残っているものを脳は「必要なもの」と判断します。
みなさんが小さい頃自転車の練習をした時、その日は何回転んでも上手くできなかったのに、翌日チャレンジしてみたらすんなり乗れたという経験はありませんか?これこそ、反復したことで脳が「必要な体の動き」として記憶を定着してくれた証、つまりは睡眠の力です。

自律神経の調節や成長ホルモンを出す

人の体には自律神経という、起きる・休むを勝手に調節してくれる神経があります。夜になったら眠くなる、朝になったら目が覚めるのはこの自律神経のおかげです。睡眠はこの自律神経のリズムが乱れていないか、できるだけ健康的なリズムになっているかを調節してくれます。そして、睡眠中の特に深い眠りに入った際に身体中に出てくるのが「成長ホルモン」です。具体的には後で話しますが、成長ホルモンは身長を伸ばす・ケガの回復を早める・筋肉や骨を強くする、など体づくりに欠かせない役割を果たしてくれます。
免疫力を上げる
睡眠中は免疫力、つまり“病気と戦う力”を強くする時間でもあります。しっかり眠ると、体を守ってくれる細胞がよく働くようになり、風邪を引きにくくなったり、早くウィルスをやっつけてくれるようになります。
この作用にはメラトニン・コルチゾールなどの“ホルモン”が関係してきますが、難しい話になるので今回は飛ばしていきますね。興味があったら調べてみてください。

体を走り回る成長ホルモン
さて、睡眠が身体にどんな影響を与えるかが分かったところで、みなさんが一番興味のある、身長を伸ばしたい・筋肉をつけたいなど「体づくり」に関しての話に移ろうかと思います。
みなさんの体を、強く・大きく・逞しくしていくためには『成長ホルモン』の存在が欠かせません。
ホルモンとは例えると“体の中の郵便配達員”です。その配達員は「脳からの指令」が書かれた手紙を持って全身をかけ回ってくれます。ホルモンの種類ごとに手紙の内容は違うのですが、成長ホルモン配達員はこんな指令を持っています。

見ての通り、成長ホルモン配達員が持っている手紙の内容は体づくりに関することばかり。この配達員が多ければ多いほど、つまり成長ホルモンが多く出れば出るほど、骨や筋肉が成長したりケガの回復が早くなるというわけです。
そして、その成長ホルモンが一番出る時間帯が睡眠中です。
ゴールデンタイムを逃すな!
眠りのリズム
人の睡眠はある一定のリズム(周期)で、浅い眠り・深い眠りがくり返されています。レム睡眠・ノンレム睡眠という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんね(レム睡眠=浅い眠り、ノンレム睡眠=深い眠り)。寝始めて深い眠りとなり再び浅い眠りになるこの1周期は約80分〜120分。このリズムを繰り返し徐々に朝の目覚めにつながっていきます。
そして成長ホルモンは、深い眠りの時に特に放出されています。

ここが大事!黄金の1周期とは?
そして、今回の話の中で1番覚えていただきたいのは、1周期目にその日出てくる成長ホルモンの大半が出てくるということです。睡眠中を通して出てくる成長ホルモンの実に70~80%がこのタイミングに出てくることから、1回目の深い眠り〜浅い眠りにかけての時間帯は【黄金の1周期】と呼ばれています。

このゴールデンタイムを手にいれることができるかどうかで、その日に成長ホルモンがしっかり出るかどうか、つまり体づくりが成功するかどうかが決まってきます。
睡眠は時間より質
例えば、8時間睡眠で最初の1周期目の質が悪い場合と、6時間睡眠で1周期目の質が良い場合を比べてみましょう。話の流れから予想できる通り、睡眠時間が短い6時間睡眠でも、1周期目でしっかり深い眠りにつくことができればスッキリとした目覚めになります。もちろん、成長ホルモンもたくさん働き体のケアや成長を促してくれます。

黄金の1周期を手にいれるために
では、良い睡眠をとるにはどうしたら良いのでしょうか?良い睡眠は、1周期目にしっかりと深い眠りにつく必要があります。そして深い眠りに着くためには、寝る前の行動が大切になります。簡単に言えば、しっかり寝る準備をして寝ることで深い眠りにつくことができる。逆に、テレビやスマホをずっと見て寝落ちするなど、寝るための準備をしていなければ眠りも浅くなってしまいます。
良い睡眠をとれるように、意識したいことは以下の通り。全て実行できなくても、出来る範囲で実践してみてください。
体温をコントロールする
まず簡単に手をつけられることとして、体温のコントロールがあります。人は体温が下がり始めると眠気を感じるようになります。そのため、逆に寝る前に体を温めてあげることで、体は体温を下げようと働き、結果的に眠りやすくなるというわけです。
・入浴する(10分以上。寝る2時間前を目処に)
・寝る前にストレッチをする
・手や足を温める

これらは一時的には体温が上がりますが、その後の体温を下げる働きを助けてくれます
サーカディアンリズムに従う

サーカディアンリズムというのは、1日の中でだいたい決まってる体のリズムのことです。つまり朝は目が覚めて、夜に眠くなるという自然の流れのことですね。
つまりサーカディアンリズムに従うというのは、単純に“眠くなったら寝る”ということです。
眠気を我慢して勉強する、友達とやりとりしているのが楽しくて眠くならないというのは良い睡眠を取るという視点からは良くない行動と言えます。
また、できれば寝る時間はおおよそ一定にすることをオススメします。そうすることで自然と「○○時になったら眠くなる」というリズムが体につくられ、寝入りをスムーズにしてくれますよ。
寝る前に頭を働かせない
寝る前はできるだけリラックスした環境で過ごしたいところです。そこでキーワードとなってくるのが“ルーティン”という言葉。
いつもの時間に歯磨きをし、いつもの寝巻きを着て、いつもの時間に布団に入る。
こういった“いつも決まった行動”をとり続けていると、脳はストレスなくその行動ができるようになります。つまり、リラックスした状態で布団にたどり着くことができるということ。
「寝ようかな、いやまだ起きてようかな」「今日はなんの服を着ようかな」「スマホでDM届いてないかな」など、色々なことで脳は使われそのたびに目覚めていきます。よくスマホは寝る1時間前には使わないようにしようと言われるのは、大量の情報が一気に目から入ってきて、起きるスイッチが入ってしまうためです。できるだけ、寝る前の行動は一定にしておきたいところですね。

最後に
睡眠のことについて学んでみていかがでしたか?大谷翔平選手が「トレーニングだ」という意味も少し理解できたのではないでしょうか?睡眠は成長期の皆さんにとって心と体を育てる大切な時間です。些細なことに思われるかもしれませんが、今から睡眠を意識することで自分に合ったリズムを理解することに繋がり、今のスポーツ生活への影響だけではなく将来の健康にもつながると考えています。ぜひ日々の小さな積み重ねを大切にしてみてください。
ちなみに今回の内容は、以下の本を参考にまとめたものです。どちらも読みやすい本ですので興味があれば手に取ってみてくださいね。



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