今では古い「とりあえず冷やす」
練習中に足首を捻った。打撲した。肉離れかもしれない。自分や仲間が怪我をした際にみんなはどんな行動を取ったことがありますか?

ヨシキの中学時代、足首を捻った人は氷と水をいっぱい入れたバケツに足を突っ込み体育館の隅でドリブルをしながら練習を見ているというのが常識でした。皆さんも知っているかもしれません「RICE処置」を行なっていたわけです。厳密には「I : Ice(冷やす)」の部分しかやっていなかったのですが…。
そして実は、この“怪我をした直後の対応”は時代が進むにつれ、考え方が大きくアップデートされました。今回は、2019年に提唱された最新の考え方「PEACE & LOVE(ピース・アンド・ラブ)」について、一緒に学んでいきましょう。
応急処置の考え方はこう変わってきた

怪我の対処法は、長い年月をかけてアップデートされてきました。
1978年「RICE(ライス)」
R:安静 I:アイシング C:圧迫 E:挙上
→ 長年の常識として広まった
2012年「POLICE(ポリス)」
P:保護 OL:適切な負荷 I:アイシング C:圧迫 E:挙上
→「安静にしすぎると回復が遅くなる」ことがわかり、「安静」が「適切な負荷」に変わった
2019年「PEACE & LOVE(ピース・アンド・ラブ)」
「アイシングも使いすぎると回復を遅らせる」ことがわかり、さらに大きくアップデートされた
(出典:Dubois & Esculier, British Journal of Sports Medicine, 2019)
この記事で紹介するのは、この中で最も新しい「PEACE & LOVE」です。
アイシングって、やらない方がいいの?
応急処置の最新の考え「PEACE & LOVE」を見て気づいた方もいると思いますが、「 I 」がどこにも出てきません。つまり最新の応急処置の中に「冷やす」という行為を除いたわけです。
怪我をしたとき、患部が腫れたり熱を持ったりしますよね。これを「炎症反応」といいます。実は、この炎症反応は体が自分で治そうとしている大切なプロセスなんです。

アイシングはこの炎症を抑える効果がありますが、それは同時に「体の回復プロセスを邪魔してしまう」可能性があることがわかってきました。
なんと、RICEを世界に広めた本人(Gabe Mirkin医師)も、2014年に「アイシングは回復を遅らせる」と自説を撤回しています。
ただし、アイシングが「完全にNG」というわけではありません。
- 痛みを一時的に和らげる効果はある
- 長時間・長期間続けるのが問題
「痛みがひどいときに短時間だけ使う」程度なら問題ありませんが、習慣的に長く当て続けるのは控えた方がよさそうです。
最新の考え方「PEACE & LOVE」とは
PEACE & LOVEは2段階に分かれています。怪我をした直後(PEACEフェーズ)と、数日経ってから(LOVEフェーズ)で、やることが変わります。
怪我直後:PEACE(ピース)

P:Protection(保護する)
これ以上悪化しないよう、患部を守ります。
- テーピングやサポーターで固定する
- 痛みが強い場合は体重をかけない
- ※保護は最初の数日間だけ、ずっと続けるものではありません
E:Elevation(高く上げる)
患部を心臓より高い位置に上げることで、腫れを抑えます。
- 足首の捻挫なら、横になって足をクッションの上に乗せる
- 特に最初の24〜48時間が効果的です
- 足の捻挫の場合、椅子をもう1つ使わせてもらって足を上げておくなど
授業中・ご飯中も足がずっと下にあるという状況を避ける
(先生に許可を取ってね)
A:Avoid anti-inflammatories(抗炎症薬・アイシングを避ける)
- 消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)の過度な使用を避ける
- アイシングも長時間・長期間は避ける
- 炎症は体が治るために必要なプロセスだから
C:Compression(圧迫する)
包帯やテーピングで適度に圧迫し、腫れを抑えます。
- きつく巻きすぎると血流が止まるので注意
- 指先がしびれたり冷たくなったらすぐ緩めてください
E:Education(正しい知識を持つ)
「どんな怪我をしたのか」「何をすれば回復するのか」を理解することが大切です。
- 焦らず、体の回復プロセスを信じる
- 「早く治したい」と無理をしない
数日後から:LOVE(ラブ)

L:Load(適切な負荷をかける)
痛みのない範囲で、少しずつ動かしていきます。
- 足首の捻挫なら、翌日から痛くない範囲でゆっくり体重をかけてみる
- 完全に動かさないよりも、少しずつ動かした方が回復が早いです
O:Optimism(前向きな気持ちを持つ)
「絶対に治る」「復帰できる」という前向きな気持ちが、回復に影響することがわかっています。
- 焦りや不安が強いと、回復が遅くなることも
- 信頼できる人(トレーナー・医師・家族)と話すことも大切です
V:Vascularisation(血流を促す運動)
患部に血流を増やすことで、回復を助けます。
- 怪我していない部位の軽い運動でOK(自転車こぎ、上半身の運動など)
- 「安静にしすぎない」ことが回復を早めます
- お風呂で体を温めることも効果的です
E:Exercise(リハビリ運動)
怪我した部位を、痛みのない範囲で少しずつ動かしていきます。
- 可動域を少しずつ広げていく
- 筋力回復のためのトレーニングも段階的に始める
まとめ:怪我したときの対応
【怪我直後】
① 患部を守る(P)
② 心臓より高く上げる(E)
③ アイシングは短時間のみ、消炎剤も頼りすぎない(A)
④ 圧迫する(C)
⑤ 焦らず体の回復を信じる(E)
【数日後から】
⑥ 痛みのない範囲で少しずつ動かす(L)
⑦ 前向きな気持ちを持つ(O)
⑧ 軽い全身運動で血流を促す(V)
⑨ リハビリ運動を段階的に始める(E)
怪我人が出たらまず大人に報告!
PEACE & LOVEは応急処置の考え方です。重症かどうか・次のステップに進めるかどうかを判断するのは専門家の仕事です。
仲間が怪我をしたら、処置より先にまず顧問の先生やコーチに報告してください。捻挫に見えても骨折していることはよくありますし、素人目にはわかりません。
報告してから、大人の指示のもとでPEACE & LOVEの処置をする、という順番が正解です。
最後に
今回紹介したPEACE & LOVEではテーピングでの固定や圧迫が含まれますが、そもそもどうやってテーピングしたら良いのか・このテーピングで合っているのかなど、おそらく専門的な勉強をした人でないと結局対処できないことがほとんどです。
ですが、そこで「何もできなかった」と悲観する必要はありません。
「今先生呼んで来るからね。横になって脚上げて待ってて?」
こんなことが言えたら200点です。
また、自分が怪我をしてしまった時も知識があればパニックにならず仲間や大人に助けを求めることができると思い今回まとめてみました。
怪我人が出た時はふと思い出してみてください。
【参考文献】
- Dubois B, Esculier JF (2019). Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. British Journal of Sports Medicine, 54(2), 72-73.
- Bleakley CM, Glasgow P, MacAuley DC (2012). PRICE needs updating, should we call the POLICE? British Journal of Sports Medicine, 46(4), 220-221.



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