スポーツをしていると出会う怪我の代表に「捻挫」があります。かくいう僕も中学時代に足首の捻挫を経験し、大人になった今でもたまに捻ってしまったり、足首の硬さが左右で全然違い、歩いていてもたまに痛みが出ます。
足首を捻挫したとき、
「痛いけど、試合が近いから」
「ここで休んだらスタメンを外されるかもしれない」
「捻挫くらいでチームに迷惑をかけたくない」
このような事情を抱えて、完全に治りきる前にスポーツへ戻っていく選手はとても多いです。ただ、復帰する・休むの答えを出す前に、改めて “捻挫” という怪我を知っておいて損はありません。今回は捻挫の中でも特に身近な、“足首の捻挫”を取り上げて説明します。
足首の捻挫は身近な怪我であるがゆえに、軽くみられる傾向があります。ですが、捻挫をした選手の約30%の人が1年以内にまた捻挫をしてしまうデータもあり、繰り返す捻挫に悩んでいる選手も多い厄介な怪我の1つです。
皆さんがよく使う「捻挫しちゃった」という言葉の裏で、体では何が起きているか、どれくらいで治るかなどを知ることで、怪我をした後の行動が今と変わっていくと思いますよ。
身近な怪我「捻挫」
まず皆さんは“捻挫”と聞くとどんな印象を持ちますか?
「ちょっと痛いけど、大人しくしておけば治る一時的な怪我」
こんなところでしょうか?
医療の教科書には、捻挫はこう書かれています
「可動域を超えた外力が加わることで、関節を支持している靭帯・関節包などの軟部組織が損傷した状態」
…難しいですね。
簡単にいうと、「大きな力が加わったことで関節が限界突破して、何かしらを痛めてしまった状態」です。
関節は様々なもので守られていますが、その代表的なものが『靭帯』です。そして捻挫をした際に「痛みは軽い」「腫れはそれほどない」としても、靭帯は少なからずダメージを受けています。そうでなければ「捻挫」にならないわけですからね。
では、痛んでしまった靭帯は回復するまでにどれくらいの時間がかかるんでしょうか?
どれくらいで治る?
治る手順やだいたいの期間は決まっています。靭帯の場合、ベースとして僕は次のように考えて皆さんにお話ししています。
⚫︎ 3~4週でジョギング開始レベル
⚫︎ 4~8週の間に色々な動作を練習していき
⚫︎ 8週以降から競技に復帰が望ましい
⚫︎ ただし重症度によって期間は前後する
この期間は靭帯が回復するまでのステップを参考に考えているものです。病院など医療機関で言われる日数もおおよそ合っているのではないでしょうか?
靭帯はどう治っていく?
ステップ① 治す材料集め開始(怪我発生〜3日)

靭帯が傷つくともちろん「靭帯を治すぞ!」と体が反応します。例えば、足首を熱くして血流を増やし治す材料(栄養)を集まりやすくしたり、痛みを出して“治してるから動かすな”のサインを送ってくれたりという具合です。
この体を治そうとする反応を「炎症」といいますが、およそ3日ほど続き靭帯を治す準備を進めます。ただし、炎症が起こりすぎても回復には悪影響を与えてしまいます。そのため「PEACE & LOVE」で対処した方が結果的に早く治ることにつながります。
ステップ② まず弱い靭帯を作っちゃおう(3日~3週間ほど)
炎症によって治す準備が整うと、“まず弱い素材を使うことにはなるけど、ざっくり靭帯作っちゃおうぜ”の時期に入ります。怪我をしてから3週間ほど経てば切れた靭帯がくっつき始めるのですが、この時期の靭帯は三匹の子ぶたでいう“わらの家”です。強い負荷がかかると簡単に壊れてしまうんですね。

痛みもほぼなくなり「もうスポーツできる!」と思うのもこの時期ですが、要注意。ただ、この時期から“少しずつ動いてみようか”と病院からも言われることが多く、僕も軽い運動を許可することが多いです。動き始めないと強い靭帯が作られないからです。
ステップ③ 靭帯をどんどん強くしていこう(3週〜2ヶ月)

靭帯を強くするにはこの時期からがとても大切です。徐々に適切な負荷を増やしていくことで、靭帯が“どの方向に強くならなければいけないか”の刺激が入り、靭帯としての強さが戻ってきます。そして、怪我をして2ヶ月ほど経った頃に“競技に戻れる強さ”が靭帯にも出てきます。
ただし、靭帯の強さ以外にも“バランス感覚” “筋力” “柔軟性”などの問題も解決しなければ、スポーツに復帰してもまた捻挫を繰り返すことになりますので一緒にトレーニングをする必要があります。そういった理由から、靭帯がさらに強くなり、体の能力として捻りにくい足首が完成するまでにはさらに数ヶ月かかるのが実際です。
治りやすさに影響するもの
どの程度傷ついたか
“靭帯を痛めた”といっても程度は違います。損傷のレベルは1〜3に分けられます。
| レベル | 状態 |
|---|---|
| レベル1 | 靭帯に強い力が加わり痛んだが切れてない |
| レベル2 | 靭帯が部分的に切れた |
| レベル3 | 靭帯が完全に切れた |
レベル3に近いほど重症度はUP、つまり治るために時間を要する可能性があります。
何本傷ついたか
靭帯は近い場所に複数あることが多いです。足首を捻った場合、2本の靭帯が同時に損傷するケースも珍しくありません。もちろん、傷ついた靭帯が少ないに越したことはないです。

こちらは右足首の靭帯です。足首の捻挫で痛めてしまうことが多いのは、青く描かれた靭帯(前距腓靭帯)とオレンジ色の靭帯(踵腓靭帯)です。これらが1本だけ傷ついたか、2本、あるいはその他の色の靭帯も傷ついてしまったかで重症度が変わります。
放置した足首
靭帯をしっかり治さずスポーツ復帰をしたらどうなるかを最後に見ていきましょう。靭帯が回復途中なのに無理な負荷をかけ続けると、“わらの家”のまま靭帯が完成します。「元の強さより弱い状態」なのにも関わらず“完成した”と体が判断してしまうのですね。
これがいわゆる「癖がついた」状態です。
靭帯が弱いと、ちょっとした動作でも足首が捻りやすくなります。そしてその捻挫癖は足首の「不安定症」という状態になり、学生生活に限らず将来ずっと付き合っていかなければいけない怪我となります。

さらに、繰り返す捻挫が足首の骨の軟骨を傷つけ、離断性骨軟骨炎(OCD)という厄介な怪我につながるケースもあります。OCDは痛みが長引き、手術が必要になることもある深刻な状態で、復帰まで半年〜1年かかります。興味があれば調べてみてください。
最後に
“足首を捻挫したら2ヶ月かかる”
そんなことを言われて「そんなに待てない」と思った人も多いのではないでしょうか?
出たい練習試合がある、大会が近い、人数が少なくてチームに迷惑がかかる…。色々な事情があり、痛みがおおよそ改善される1ヶ月程度で練習に戻る選手はたくさんいます。復帰時期としてはもちろん早いのですが、現場の人間として気持ちはよく理解しているつもりです。
ただ、そのとき「自分の足首が今どの状態か」ということをしっかり認識する必要があります。この記事を読んでくれた皆さんは「痛みが無くなるだけじゃダメなんだ」と1つ上の知識を持ってくれたと思います。その知識は、例えば「復帰する or 休む」の選択をする時、納得して自分で決めることができたり、周りの様々な意見も受け入れられるようにしてくれるはずです。また、スポーツには復帰してるけど部活とは別にトレーニングをしなきゃいけないんだ・ストレッチをしなきゃいけないんだという気持ちも芽生えてきてくれるのではないでしょうか。
そんな主体性を持った選手・学生が1人でも増えて欲しいなと願いつつ、今回の記事はここまでになります!
【参考文献】
- Effect of unsupervised home based proprioceptive training on recurrences of ankle sprain: randomised controlled trial. BMJ. 2009.
- Vuurberg G, et al. (2018) Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains. Br J Sports Med. 52(15):956.
- Frank CB. (2004) Ligament structure, physiology and function. J Musculoskelet Neuronal Interact. 4(2):199-201.
- Gribble PA, et al. (2016) Evidence review for the 2016 International Ankle Consortium consensus statement on the prevalence, impact and long-term consequences of lateral ankle sprains. Br J Sports Med. 50(24):1496-1505.


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